レモンと殺人鬼
SNSで見かけて、その場で買った
特に迷わなかった。
タイトルと「このミス大賞」という文字が目に入った瞬間、カートに入れていた。最近こういう衝動買いが増えている気がする。
叙述トリックを「警戒しながら」読んだ
「殺戮にいたる病」を読んでから、叙述トリック系のミステリーへの向き合い方が変わった。最初から「何かある」と思いながら読む癖がついてしまった。
この本もそうだった。序盤から、どこかに仕掛けがあるはずだと思いながら読み進めた。姉妹の構図、語り口の微妙なズレ、説明されすぎる部分と説明されない部分のバランス——あちこちに引っかかりを感じながら、でも確信は持てないまま読んでいた。
「やはりな」と思った瞬間
終盤、最初のどんでん返しが来たとき、「やはりな」と思った。
「完全にやられた」ではなく、「来るとは思っていたが、こう来たか」という感じ。騙されたというより、予感が形になったような。
それが良かったか悪かったかというと、正直どちらとも言えない。驚きは薄れても、構造を確認する面白さはあった。
気になったこと
読んでいて、展開が少し無理やりに感じる場面があった。
どんでん返しを成立させるために物語が組まれている、という印象が何度かよぎった。伏線というより、仕掛けのために逆算された設定に見えてしまう部分がある。その感触が、読み終えた後に少し引っかかったまま残った。
面白くなかったわけではない。でも、すっきりとも言い切れなかった。
レモンの意味
最後まで読んで、タイトルの意味が分かったとき、「なるほど」と思った。
きれいな回収ではある。ただ、「そうか、だからこのタイトルか」という納得感で、感情が大きく動く類ではなかった。
「殺戮にいたる病」でタイトルの意味を知ったときの、あの冷水を浴びたような感覚とは違う。
「殺戮にいたる病」と比べると
どちらもこのミス受賞作で、叙述トリックという共通点がある。でも読み終えた後の質が違う。
「殺戮にいたる病」は、騙されたことへの衝撃と、伏線の精度への感嘆が同時に来た。この本は、どんでん返しの畳み掛けが主役で、伏線の緻密さより展開のスピードに重心がある。どちらが好みかは人によるが、自分は前者の方が刺さった。
ただ、これはどちらかが劣るという話ではない。求めるものが違う本だと思っている。
読み終えて
読んで後悔はしていない。でも、熱が冷めるのも少し早かった。
叙述トリック初体験の人なら、かなり楽しめるはずだ。どんでん返しの量と密度は本物で、ラストに向かうスピード感は気持ちいい。自分のように「どこかにある」と思いながら読んでしまうと、少し違う体験になる。
読む順番は選んだ方がいいかもしれない。