殺し屋の営業術

著者: 野宮有
読了: 2026/5/31
小説エンタメ野宮有Audible

タイトルだけで買った

「殺し屋の営業術」——この文字を見た瞬間、内容を調べる前にカートに入れていた。

営業本だと思っていた。タイトルにある「営業術」という言葉と、「殺し屋」というキャッチーな比喩で、自己啓発やビジネス書の棚に並んでいる一冊だと。

開いて、すぐに違うと分かった。これは小説だった。


設定が、ずるい

元トップ営業マンが、とある事件に巻き込まれ、殺し屋業界で「営業」をすることになる——そういう話だ。

この設定の斬新さに、最初の数分でやられた。

殺し屋×営業、という組み合わせ自体は言葉遊びっぽく見えるかもしれない。でも実際に読んでみると、その二つの世界が思いのほか自然に結びついている。「営業とは何か」という問いを、まったく別の文脈から照らしてくる感じがある。設定の面白さが単なるギミックに終わっていない。


ギャップがとにかく面白い

主人公の造形が効いている。

トップ営業として培ってきたスキルや思考回路を、殺し屋業界という全く異なるフィールドに持ち込む。その違和感と、それでも通用してしまう部分のバランスが読んでいて気持ちいい。

「普通こうはならないだろう」という状況を、主人公のキャラクターが強引ではなく自然に乗り越えていく。そのギャップの面白さが、物語全体を引っ張っていた。


続きが読みたい

読み終えた後、素直にそう思った。

世界観がちゃんと広がっていて、まだ掘り下げられそうな余地がある。登場人物も、もう少し見ていたい人が何人かいた。

一冊で綺麗に閉じる話ではなく、続きを前提に作られている感じがする。それが少し悔しいが、続刊が出たら迷わず手を伸ばすと思う。


読み終えて

タイトルで釣られて、小説だと知って、それでも楽しめた。

「営業術」という言葉に引きずられて内容を誤解していたけれど、その誤解込みで面白い体験だったと思っている。予想外の方向に転がった本は、たいてい記憶に残る。

殺し屋の営業術(野宮有)