殺戮にいたる病
「ミステリーの教科書」
読み終えた瞬間に出てきた言葉は、それだった。
Amazonで何度も上位に見かけるたびに気にはなっていた。手に取ったのはそれから少し経ってから。表紙の印象は地味だが、タイトルはずっと頭に引っかかっていた。「殺戮にいたる病」——なんとなく、ただごとではないと思っていた。
三つの視点が交差する構造
物語は三つの視点から進む。連続殺人犯の母親、事件を追う老刑事、そして犯人自身。それぞれの章が交互に展開し、少しずつ真相に近づいていくように見える。
犯人視点の章が、とにかく重かった。犯行描写のリアルさ、残酷さは想像以上だ。文章が巧みで、嫌でも引き込まれてしまう。目を背けたいのに、読む手が止まらない。
母親の視点も印象に残った。息子を信じたい気持ちと、じわじわと侵食されていく不安。愛情と恐怖が入り混じる描写は、犯行シーンとはまた別の重さがあった。
ラスト、完全にやられた
最後まで気づかなかった。本当に、一切。
ページをめくった瞬間、頭が真っ白になった。「そういうことか」ではなく、「え?」だった。こんな感覚は久しぶりだった。
読み返したくなったが、しばらく動けなかった。あのラストを知った上で最初に戻ったら、全部が違う意味で読めるはずだ。伏線はきっと至るところに埋まっている。計算されている、としか思えない構成だった。
こんな人に読んでほしい
ミステリーが好きで、叙述トリックに慣れていない人には特に勧めたい。「そういう仕掛けがある」と知っていても、おそらく騙される。それくらい精度が高い。
ただし、犯行描写はかなりグロテスクだ。エログロ表現が苦手な人にはストレートには勧めにくい。そこだけ正直に伝えた上でなら、ミステリー好きには絶対に読んでほしい一冊。
読み終えて
「ミステリーの教科書」と書いたが、これは褒め言葉として最大限だと思っている。叙述トリックとはこういうものだ、という一つの完成形を見た気がした。
読んだことを後悔はしていない。でも、初読の体験はもう戻ってこない。それがほんの少し、惜しい。